NOBのArduino日記!

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趣味は車・バイク・自転車・ラジコン・電子工作です。

ボルタ電池!(塩水編)

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ボルタ電池
 
 息子が喜びそうなボルタ電池を使った実験をしてみました!
 100均のミニバケツに塩水と銅板を入れてLEDに繋ぐだけであら不思議!数日間は余裕で光っちゃいます!

1. ボルタの電池とは?

 ボルタ電池とは、1800年にイタリアの物理学者ボルタが考えた起電力1.1Vの一次電池です。
 正極にCu(銅)を、負極にはZn(亜鉛)を使います。
 電解液にはH2SO4 aq(硫酸水溶液)を使いますが、家庭で使うには危険なので5wt%NaCl aq(5%塩水)で代用しました。
NaClは水溶液の電気抵抗を下げる目的で添加しました、pHはむしろ上がるので大きな電流は流せません
 
1.1 反応
 負極の亜鉛は溶液中に含まれる水素イオンより、イオン化傾向が大きいため電子を失って2価の陽イオン(Zn²⁺)となります。
 電子(2e-)電線を伝わって銅板に流れ、水素イオン(2H⁺)と反応して水素(H₂)となり放出されます。
 この酸化還元反応は本来発熱反応であり、そのエネルギーを電子の流れにして電気エネルギーに変換したのがボルタ電池であり、反応式は次のようにあらわされます。
負極: Zn → Zn2+ + 2e-
正極: 2H+ + 2e- → H2
 
1.2 電流
 電池が流せる電流は電解液を変えることによって大きく変わります。
 H2SO4で有ればH(水素)の価数が2と多い為、水溶液とした場合pHの低い(水素イオン濃度が高い)水溶液が簡単に作れます。
 水素イオン濃度が高い電解液を使った方がZnを高速にイオン化(Zn2+)出来、それと同時に電子(2e-)も放出する為大きな電流が流せます。
 今回使用する5wt%NaCl aqはpH8程度で有る事から水素イオン濃度は0.0000001mol/L(式①)と、鉛電池に使われるpH0の0.5mol/L H2SO4 aq(式④)の水素イオン濃度1mol/L(式①)に比べると100万分の1の水素イオン濃度しかなく僅かな電流しか期待出来ません。

○pHと水素イオン濃度の関係
pH = log10 1÷[H+](mol/L)・・・式①
 
○水素イオン濃度と酸のモル濃度の関係
[H+](mol/L) = 酸の価数×酸のモル濃度(mol/L)×酸の電離度・・・式② 
 
○式①に式②を代入すると 
pH = log10 1÷(酸の価数×酸のモル濃度(mol/L)×酸の電離度)・・・式③

○式③より、モル濃度0.5mol/L(49g/L)硫酸のpHは(硫酸の価数2、酸の電離度1)
pH = log10 1÷(2×0.5×1) = log10 1 = 0・・・式④
 
1.3 電圧
 化学電池における起電力を求める為には、電極間の電位差を求める事で有る程度推測できます。
 電位差を求めるには電極に使用する元素のイオン化傾向」(溶液中における元素のイオンへのなりやすさ、表1参照)から「電位E°」を使い式⑤の様に計算します。

○ 電位差の計算例
 正極にCu(E°=0.34V)、負極にZn(E°=-0.76V)の場合の電位差 
電位差(V) = (0.34V) - ( -0.76V) = 1.1V・・・式⑤
 
 ボルタ電池は1つのセルで起電力1.1V得られますが、欲しい電圧がそれより高い場合は式⑥の様に目的の電圧になるまで電池のセルを増やしそれを直列に接続します。
※電池が供給できる電流を超える負荷を接続した場合は電圧が降下します。
 
○セル数と電圧 
欲しい電圧(V) = 1.1(V/セル) × X(セル)・・・式⑥
 
   表1:イオン化傾向
元素 電位E°
Li (リチウム ) -3.05 V
Cs (セシウム) -2.92 V
Rb (ルビジウム) -2.92 V
K (カリウム) -2.93 V
Ba (バリウム) -2.92 V
Sr (ストロンチウム) -2.89 V
Ca (カルシウム) -2.84 V
Na (ナトリウム) -2.71 V
Mg (マグネシウム) -2.36 V
Th (トリウム) -1.90 V
Be (ベリリウム) -1.85 V
Al (アルミニウム) -1.68 V
Ti (チタン) -1.63 V
Zr (ジルコニウム) -1.53 V
Mn (マンガン) -1.18 V
Ta (タンタル) -0.81 V
Zn (亜鉛) -0.76 V
Cr (クロム) -0.74 V
Fe (鉄) -0.44 V
Cd (カドミウム) -0.40 V
Co (コバルト) -0.28 V
Ni (ニッケル) -0.26 V
Sn (錫) -0.14 V
Pb (鉛) -0.13 V
H2 (水素) 0.00 V
Sb (アンチモン) 0.15 V
Bi (ビスマス) 0.32 V
Cu (銅) 0.34 V
Hg (水銀) 0.80 V
Ag (銀) 0.80 V
Pd (パラジウム) 0.92 V
Ir (イリジウム) 1.16 V
Pt (白金) 1.19 V
Au (金) 1.52 V
※表1:H2より上側が酸に溶けてH+(水素)を発生するので負極材料として使われます。下側が酸に溶けない金属で正極材料として使われます。

イオン化傾向の覚え方
 イオン化傾向の並びだけでも覚えていると電池を作ったときにどちらが正極で負極になるか分かるので便利です。
 表1を覚えるのは大変なのでそんな時は語呂合わせで覚えます。
 イオン化傾向を覚える為に良く使われる語呂合わせが表2の「貸そうかな、まぁあてにするなひどすぎる借金」です。

表2:イオン化傾向の覚え方 
貸そう(K)か(Ca)な(Na)、ま(Mg)ぁ(Al)あ(Zn)て(Fe)に(Ni)するな(Sn)ひ(H)ど(Cu)す(Hg)ぎ(Ag)る借(Pt)金(Au

○実際に使われている電池
 国際規格「IEC 60086-1」 と 国内規格「JIS C 8500」で、電池の形状・寸法・電池系などが定められており、基本となる電池系は表3の通りです。

表3:電池の種類一覧(電池系)
記号             名称 電圧(V)
なし マンガン乾電池(二酸化マンガン→塩化亜鉛水溶液→亜鉛) 1.5
A 空気電池(酸素→塩化アンモニウム・塩化亜鉛水溶液→亜鉛) 1.4
B フッ化黒鉛リチウム電池(フッ化黒鉛→非水系有機電解液→リチウム) 3.0
C 二酸化マンガンリチウム電池(二酸化マンガン→非水系有機電解液→リチウム) 3.0
E 塩化チオニルリチウム電池(塩化チオニル→非水系有機電解液→リチウム) 3.6
F 硫化鉄リチウム電池(硫化鉄→非水系有機電解液→リチウム) 1.5
G 酸化銅リチウム電池(酸化銅(II)→非水系有機電解液→リチウム) 1.5
L アルカリ乾電池(二酸化マンガン→アルカリ水溶液→亜鉛) 1.5
P 空気亜鉛電池(酸素→アルカリ水溶液→亜鉛) 1.4
S 酸化銀電池(酸化銀→アルカリ水溶液→亜鉛)
1.55
Z ニッケル系一次電池(オキシ水酸化ニッケル→アルカリ水溶液→亜鉛) 1.5
H ニッケル水素電池(ニッケル酸化物→アルカリ水溶液→水素吸蔵合金) 1.2
K ニッケルカドミウム電池(ニッケル酸化物→アルカリ水溶液→カドミウム) 1.2
IC リチウムイオン電池(リチウム複合酸化物→非水系有機電解液→炭素) 3.7
PB 鉛蓄電池(二酸化鉛→希硫酸→鉛) 2.0
※なし~Zは一次電池(使い捨て)、H~PBは二次電池(充電可)
※名称の()内は、(正極素材→電解質→負極素材)の順に記載しました。
 
因みに
○「CR2032」の「C」は、表3電池系より「二酸化マンガンリチウム電池」の事
○「CR2032」の「R」は、円形(Round)の事
「CR2032」の「20」は、外形(φ20mm)の事
「CR2032の「32」は、高さ(3.2mm)の事

1.4 抵抗
 同じ電極で、使用する電解液のpHが同じ位であっても、電解液自体の抵抗(Ω・m)によって流せる電流は大きく異なります。
 pH7のH2O aq(超純水)とpH8の5wt%NaCl aqを比較した場合、一見pH7のH2O aqの方がpHが低く水素イオン濃度が高い為5wt%NaCl aqより多くの電流を流せそうですが、実際はH2O aqの電気抵抗はおよそ1.82GΩ・m(G:10^9)と非常に高い為殆ど電気を流しません。
 しかしH2O aqに50g/LのNaClを加えた5wt%NaCl aqでは50Ω・mに抵抗が下がり、より多くの電流が流せる様になります。

2. 材料

 今回ボルタ電池を作るのに使った材料は正極にCu(図2-1)、負極にZn(図2-2)で、電解質には5wt%NaCl aq(図2-3)です。

※銅版:市販されている銅版はビニールで梱包してあり、さらに銅板上に薄い透明フィルムが張られているので実験する前に剥がしておきます。

亜鉛バケツ:ブリキ板ともガルバリウム鋼板とも言いますが、亜鉛めっきには主に「溶融亜鉛めっき鋼板」と「電気亜鉛めっき鋼板」があります。
 私の経験上溶融亜鉛めっき鋼板の方が鉄板に対する亜鉛の付着量が多く、また後処理(Cr系の防錆処理、クロメート処理と書かれているとまず電池として反応し難いです)があまりされていない傾向に有るので、100円ショップなどで亜鉛めっきミニバケツを買うときはクロメート処理と書かれていない図1の様なスパングル模様をした「溶融亜鉛めっき鋼板」を買うのが良いかと思います。
図1:溶融亜鉛めっき鋼板のスパングル模様

 他に絶縁テープ(図2-4)・ワニ口クリップコード(図2-5)・オレンジ色LED(図2-6)の計6種類です。
 
2.1 電極
                           
 
2.2 その他
図2-3:塩 200g   図2-4:絶縁テープ
 
       イメージ 3 

2.3 有ると便利

3. 作る

図2-1~2-6+αの材料を使ってボルタ電池を実際に作ってみました!
動画1:ボルタ電池を作製!
 
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図3:ボルタ電池でLED点灯!
 
 電圧を測定した結果3.571Vの電圧が発生していました!
 LEDを接続した際にアノードとカソードに掛かる電圧と電流は1.8V,1.2mAとかなり非力な電力ですが一応光ってます!

4. まとめ

 LED のON・OFFの仕方(黒いクリップをバケツに触れると光り、離すと消える)を息子に教えると大喜びで遊んでました!
 因みに左下のバケツが一番低い電圧なので黒クリップで触っても殆どLEDは光りませんが、右のバケツに行く程電圧が上がり明るく光ります!
 
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