NOBのArduino日記!

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趣味は車・バイク・自転車・ラジコン・電子工作です。

コイルを使った降圧回路

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図1:降圧回路(チョッパー回路)
 
 前回の記事(昇圧回路)に引き続き、高い直流電圧から低い直流電圧を作る降圧回路(チョッパー回路)をご紹介します。図1の4つの部品が基本的な構成で、スイッチの開時間と閉時間の比率(デューティ比)を変えることで出力電圧が自由に下げられます!(スイッチ[左上]・コイル[右上]・ダイオード[中上]・コンデンサ[右中])
やり方は簡単、スイッチを素早く(出来れば1秒間に10万回位)ON・OFF繰り返すだけです。
 しかし人力でスイッチをON・OFFする訳ではないので、実際の回路はもう少し複雑になります。

 

具体的な降圧方法をiCircuitを使ってシュミレートしてみましたのでご紹介致します。(シュミレートは3GHzの分解能で行いました。)
※下記紹介例で自作される場合はオシロスコープなどで十分出力電圧を確認し、電子部品の耐電圧に十分余裕を持って設計される事をおすすめします。
 失敗すると、25V,47μFのアルミ電解コンデンサにAC100Vを誤って接続した時の私の様に、眉毛ともみあげがチリチリになる以上の被害を被る可能性がありますので十分ご注意下さい。
 市販品の各種降圧型DCDCコンバータの方が小型・高性能・お手頃価格そして安全です。
 

1. 回路の説明

 図1の回路構成だけで降圧出来ない事は無いのですが、何かと不便なので、図2の様に4つ程回路を追加します。
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図2:タイマーIC555を使用したチョッパー型降圧回路
 
○1つ目の追加回路
 上記で説明したスイッチをON・OFFする人の役割をLMC555と言うタイマーICに置き換えます。(電子工作では非常に汎用性の有る定番のICです
 発振回路は可聴域(20kHz)以上かつLMC555の発振限界で有る3MHz以下が条件です。高周波の方が部品構成は小さくなりますのでとりあえず1.5MHzとし、デューティ比50%程度、発振回路の消費電流は極力下げたいので使用する抵抗は10kΩ以上100kΩ以下から計算(iOSの無料アプリでRS-Toolboxが便利です。)しました。計算の結果は図3の通りです。

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図3:抵抗とコンデンサの選択

○2つ目の追加回路
 スイッチの役割をするパワーMOS FETで、取り扱いが簡単なNchエンハンスメント(2SK2232)と言う種類を使います(単純にゲートに電圧を加えればONそうでなければOFF)。標準的なパワーMOS FETには端子が3本有り、1つ目はゲートと言う端子で、規定の電圧を加えると2つ目のソースと言う端子と3つ目のドレインと言う端子間の抵抗が数十mΩに下がり通電します。
 トランジスタ[2SC1815GR等]は電流を増幅しますが、MOS FETは電圧を加えることで、スイッチの様にゲート・ソース間が通電しますので、大電流を流がす回路になる程MOS FETの方が適しています

○3つ目の追加回路
 安定した電圧を得る為の回路で出力電圧から分圧したものを、トランジスタ(2SC1815GR)ベースに接続し、出力電圧が高くなるとタイマーIC(LMC555)のControl端子がGNDに落ちる事で出力電圧を抑制します。
 
○4つ目の追加回路
降圧回路は汎用的に使える様に、10kΩの半固定抵抗(図2右下の矢印の有る抵抗)を調整する事で出力電圧が可変できる様にしています。
 
 
○コイルの選定
 チョッパー回路を用いた降圧回路で使用するコイルは、デューティー比が50%(スイッチのON時間の割合)を超えるとサブハーモニック発振と言う現象が起こる事が知られています。今回作製するチョッパー回路はタイマーIC(LMC555)の設定上デューティー比が50%を超える事は無いのでそこまで気にする必要は無いです。参考にサンケン電気製、SI-8000Yシリーズの技術資料より、見易いコイルの選定表が有りましたので図4に引用して示します。※この製品は130KHz駆動です。
 
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図4:サブハーモニック発振を回避するためのインダクタンス L 値選定範囲
 
 特に気にせず入手性の良い47μFコイルでシュミレートしてみました。

ダイオードの選定
 通常のダイオードですと、ダイオード内の順方向抵抗により、電圧降下が1V程度発生します。それはそのまま損失になってしまうので、なるべく電圧降下の少ないショットキーバリアダイオード(電圧降下0.3V程度)の使用を想定してシュミレートを行いました。

2-1. 半固定抵抗設定別 出力電圧

 半固定抵抗の設定を全閉⇔中間⇔全開に変えた時に、出力が100Ωの負荷に与える電圧と電流を測定した結果を下図に示します。
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図5:半固定抵抗全閉
 
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図6:半固定抵抗中間
 
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図7:半固定抵抗全開
 図5の全閉状態では、出力電圧抑制用のトランジスタが働いていない事から、タイマーIC(LMC555)の初期設定で有るデューティー比50%により、およそ半分の電圧で有る7.11Vが出力されている事が確認出来ました。
 図6の中間状態では、出力電圧抑制用トランジスタに電流が供給され3.58Vへと出力電圧が下がっている事が確認出来ました。
 図7の全開状態では、出力電圧抑制用トランジスタに最大限電流が供給される事により、出力電圧はこの回路の最小値で有る1.99Vの出力電圧で有る事が確認出来ました。

2-2. 半固定抵抗設定別 電圧抑制トランジスタの動作

 半固定抵抗の設定を全閉⇔中間⇔全開に変えた時に、出力電圧抑制用トランジスタ内に流れる電流を測定した結果を下図に示します。
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図8:半固定抵抗全閉
 
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図9:半固定抵抗中間
 
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図10:半固定抵抗全開
 
 図8の全閉状態では、コレクタ電流(Ic)は101f(フェムトと読み10のマイナス15乗の意味)Aと、殆ど電流が流れていない状態です。
 図9の中間状態では、コレクタ電流(Ic)は1.36mA流れており、このぐらい流れ始めるとタイマーIC(LMC555)内の基準電圧が低下し、ON時間が減少(OFF時間は変わらない)する事で、出力電圧は低下します。
 図10の全開状態では、コレクタ電流(Ic)は1.84mA流れており、この回路では最大限タイマーIC(LMC555)内の基準電圧が低下し、出力電圧は最低となります。
 

2-3. 半固定抵抗設定別 負電圧とダイオード

 半固定抵抗の設定を全閉⇔中間⇔全開に変えた時に、コイルによって発生する負電圧によってダイオード内に流れる電流を測定した結果を下図に示します。
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図11:半固定抵抗全閉
 
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図12:半固定抵抗中間
 
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図13:半固定抵抗全開
 
 コイルによる負電圧はどれも11.2V程度発生しております。本来電圧が高いVCC側が、GND側より11.2Vも低くなる事から、コイルに吸い込まれる形でダイオードのGND側からVCC側におよそ30~97mAの電流が供給されています。 

2-4. 半固定抵抗設定別 MOS FETの動作

 半固定抵抗の設定を全閉⇔中間⇔全開に変えた時に、MOS FETのスイッチング動作状態を測定した結果を下図に示します。

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図14:半固定抵抗全閉
 
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図15:半固定抵抗中間
 
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図16:半固定抵抗全開
 
 図14~16のドレインソース間の電流(Ids)を見ると電流が流れていない状態(MOS FETがOFFの状態)の間隔は、半固定抵抗の状態には影響されずどれも同じくらいです。しかし電流が流れている状態(MOS FETがONの状態)は半固定抵抗の状態に大きく影響されて変化しております。つまりOFFは変わらないが、ONが大きく増減する事でデューティ比が変わり、結果として図14のデューティ比が高いものは出力電圧が高くなり、図16のデューティ比が低いものは出力電圧が低くなります。
 またこの回路はON時間を増減して、結果としてデューティ比を変えているだけですので、ON時間が短くなればその分周波数は上がり(図16は2.44MHz)、ON時間が長くなれば周波数は下がり(図14は1.02MHz)ます。
 

3. まとめ

 回路設計1日、iCircuitの各種設定項目と格闘する事5日、ブログにアップする為3時間程記入して、最後のまとめを書いている段階でiPadがフリーズし全てが消えた事は良い思い出。
 降圧回路っていろんな意味でハマりました。
 
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